• 2022年

    マチコトバ – 江六前 一郎

    [選定作品]
    「契りの果て」(シャルル・ボードレール 著 /杉本秀太郎 訳『悪の華』(彌生書房)より)

    [選定理由]
    住民でも出身者でもない、その土地と関係が深い人々のことを「関係人口」と呼ぶそうです。昨年「道後温泉クリエイティブステイ」で道後に滞在した僕も、いわば関係人口の一人。今回、選者の依頼を受けたときは正直驚いたというのが本音なのですが、困り果てた時ふと思いました。「そうか、自分にとって関係の深い人の詩を選んだらいいのか」

    フランス文学者・杉本秀太郎先生は、僕が編集者として一緒に仕事をした中で、数少ない著名な作家です。17年間勤めた会社の社長・民輪めぐみ氏の恩師でもあります(つまり、恩師の恩師です)。その杉本先生が遺した代表的な訳書がボードレールの『悪の華』です。

    ある「ふたり」の情事を描写したこの詩は、直接的な表現がないからこそ、かえってエロティックな情景を強く想起させます。

    「いきるよろこび」というテーマにこの詩を選んだのは、「ふたり」という単位に「生」を強く感じたからです。それと同時に、その世界を覗こうとする世界にもまた僕は「生」を感じてしまいます。「いきるよろこび」とは、じつは人には話せない秘めたるものだと思うのです。

    設置期間:

    〜2023年2月26日(日)

    設置場所:

    松山市東消防署

    江六前 一郎
    えいろくまえ いちろう

    編集者・ライター。1977年千葉県生まれ。江六前(えろくまえ)は本名。岩手県一戸町の同名集落の名に由来する。1997年、国立木更津工業高等専門学校卒業。2002年、編集プロダクション「タミワオフィス」に入社。歴史や芸術、旅をテーマにした雑誌の編纂に携わる。2012年から食の専門誌『料理王国』を担当、副編集長も経験。国内外の一流レストランやシェフを取材、取材店舗はのべ350店におよぶ。2020年4月からフリー編集者に。愛媛県食材では媛っこ地鶏が好き。

道後オンセナート2022(DOGO ONSENART 2022)

2022年、「みんなの道後温泉 活性化プロジェクト」の一環として、4年ぶりとなる芸術祭「道後オンセナート2022」を開催しました。
テーマは「いきるよろこび」です。2021年に先行して作品を公開した大竹伸朗さん、蜷川実花さん、隅川雄二さん、尾野光子さんの4名の作 品に加え、過去最多となる約30組のアーティストやクリエイターが参加、自由に鑑賞できる常設のアート作品を設置するほか、イベントを随 時開催し、いつ来ても楽しめる、何度も訪れたくなる芸術祭を開催しました。
道後温泉は昔も今も、人の身体を、心を温め続けてきました。心身を癒し、活力ある人生を送り、また、活気あふれるまちを未来につなぐた め、地域とアーティストやクリエイターが協力しあい、道後を、世界を温めました。

会期:2022年4月28日 〜 2023年2月26日

DOGO ONSENART 2022

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道後におけるアートの取り組み